キッチンカー営業許可・食品衛生法

2021年(令和3年)6月から施行されたキッチンカーの保健所の営業許可・食品衛生法の詳細と対策

2021年(令和3年)6月1日より改正・食品衛生法が施行されました。
食品衛生法の改正に伴い、全国の保健所の営業許可のルールも変更され、キッチンカーの営業にも大きく影響することになります。
このページでは、改正・食品衛生法の施行によって、キッチンカーを運営する上で注意する点・対策について解説していきます。

1、2021年(令和3年)6月1日以降のキッチンカーの営業許可

1-1、食品衛生法の改正の大枠

改正食品衛生法は2018年6月13日に食品衛生法等の一部を改正する法律が公布されたことによります。改正の主旨は多岐に渡りますが、キッチンカーに関係するところとしては、食中毒の対策強化のため、食品や器具、容器などの基準の国際化、事業者の衛生管理の向上、それにともなう営業許可等の基準の見直しです。
詳しくは厚生労働省のサイトで確認することができます。

概要https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000345946.pdf
背景・主旨https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000345948.pdf
改正の概要https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000481107.pdf

1-2、改正・食品衛生法の中心となるHACCP

改正の目的の一つに、衛生管理方法の国際化があります。これは具体的にはHACCP(ハサップ)のことで、HACCPとは「事業者自らが、食中毒菌汚染等の危害要因をあらかじめ把握(Hazard Analysis)した上で、原材入荷から製品出荷まで の全工程の中で、危害要因を除去低減させるために特に重要な工程(Critical Control Point)を管理し、製品の安全性 を確保する衛生管理手法」というものです。

キッチンカーを含む小規模事業者は、効果的なHACCP計画を立てるための財源や専門的知識がないケースが多いので、保健所や業界団体や専門家等から、積極的に専門的助言を受けるようにしましょう、ということになっています。

保健所に相談すると、主に食品の管理方法と記録についてアドバイスを受けることができます。
HACCPに関する書籍も多く出版されており、厚生労働省もHCCPに関する動画を配信しています。

2、改正・食品衛生法で変わるキッチンカーの変更点

2-1、2021年6月以前の営業許可と2021年6月以降の営業許可の混在になる

今回の食品衛生法の改正による変更点は多岐に渡ります。キッチンカーの設備基準も全国で統一されるなど大きく変わります。

他の法律でもそうですが国としては、新しい法律が施行される際、すでに営業している事業者の権利が失われたり、設備改修するために事業者に新たな負担をかけない方針です。改正・食品衛生法も同様で、食品衛生法とそれに関する条例の設備基準で、すでに営業許可を取得しているキッチンカー事業者に対しては、

  • 現在取得している営業許可は有効期限まで有効
  • 有効期限満了後に、次の営業許可の更新の場合も現行の設備で認める方針

ということになると考えられています。

つまりしばらくの期間は、旧基準(現在の)営業許可と、新基準の営業許可の2種類が混在します。

1回の営業許可は5年間の有効期限となっていますので、すでに営業許可を取得済みのキッチンカー事業者の方は、次回の営業許可の再申請をする前までに管轄の保健所の確認をお願いします。

2-2、菓子製造業・喫茶営業の営業許可がなくなる

細かく解説するといろいろあるのですが、自動車による営業許可、いわゆるキッチンカーで取得する営業許可はこれまで、「飲食店営業」「菓子製造業」「喫茶店営業」の3種類が中心でした。
改正・食品衛生法以降はキッチンカーで「菓子製造業」「喫茶店営業」の区分がなくなり、「飲食店営業」に一本化されます。
菓子製造業がなくなるのは自動車営業に関してのみです(固定施設による菓子製造業はなくなりません)。改正・食品衛生法の施行後は、すべて飲食店営業にまとめられることになりますが、現行の菓子製造業(自動車)も営業許可の基準がやや緩和される傾向だと言われています。

2-3、キッチンカーの設備基準が全国統一になる

キッチンカーの出店は都道府県をまたぐことも多く、自分の営業したい都道府県すべての設備基準を満たす必要がありました。
しかし、この設備基準は隣接する都道府県でも大きく異ることがあり、また営業許可申請書類もそれぞれ違うため、営業許可を取得するまでに非常に煩雑なものとなっていましたが、全国で統一の基準になります。
今回の食品衛生法改正の目的として、全国的に異なっていた設備基準の統一を図る目的があり、都道府県ごとに存在していた設備基準の違いが解消されていきます。

2-4、普通車と軽自動車の違いがなくなる

これまで、神奈川県や静岡県など、普通自動車と軽自動車の違いによって、必要となる設備基準が異なる条例を持つ都道府県がありました。
設備基準の統一とともに、この普通自動車、軽自動車の違いによる設備基準も統一となるため、軽自動車のメリット・デメリット、普通自動車のメリット・デメリットも平均化されていきます。
具体例を挙げると、神奈川県では軽自動車は1品目しか提供ができませんでしたが40㍑以上の給排水タンクを搭載するだけで営業許可が取得でき、普通車は200㍑の給排水タンクを搭載することで複数品目を提供することができました。給排水タンク容量の詳細は後述しますが、改正食品衛生法の施行後は、普通自動車と軽自動車による設備要件の違いが解消されていきます。

2-5、各都道府県にあった異なる設備基準の今後の考え方

例えば、これまで東京都では「シンクは幅45cm×奥行き36cm×深さ18cm以上」という他の都道府県にはない設備基準がありました。これについてどのような見解かを東京の保健所職員の方に聞いたところ、次のようなご意見でした。
「施行後は、新規の営業許可申請の際、これまであったシンクのサイズ基準に満たないことで営業許可が下りなくなることはありません。しかしこれまで東京都下ではこのシンクサイズで多くのキッチンカーが稼働していますので、推奨サイズとか、参考サイズとかといった基準として残ることになると考えています。そして、ボウルやタッパーのような大きさの排水受けを備えた営業許可の申請もありましたが、当保健所ではそのようなサイズの排水受けはそもそもシンクとは認めていませんし、施行後も認めることはないと考えています。」
これまで大阪府や奈良県では給湯器が必要であったり、福岡県では300㍑の給排水タンクが必要であったり、広島県では調理作業台を覆う換気扇フードが必要であったり、と都道府県ごとに様々な設備基準がありましたが、これらは統一されていくと思われますが、この東京都の保健所のように、引き続き、都道府県ごとで推奨の設備基準として残っていくと思われます。

2-6、非接触水道の導入

キッチンカーにおける設備基準の大きな変更点として「非接触水道」の導入があります。これもHACCPの管理ルールによるものです。これまでキッチンカーでも認められてきている一般的な蛇口の水栓ですがこれが通常のままでは不適合となります。
一般に手を洗う際、

(1)ハンドル部を回して水を出す

(2)石鹸で手を洗う

(3)ハンドル部を回して水を止める、という手順ですが

(1)の時点で手が汚れている前提ですので、(3)のハンドル部を触った時点で手は再汚染される、ということになります。この再汚染を防止するため、(2)の手洗い後に、ハンドル部を触らなくて良い方法が求められることになります。
この「非接触水道」の変更はこれまで営業許可を取得してきたキッチンカーでも備えているキッチンカーはほとんどないのではないでしょうか。
しかも、キッチンカーの給排水システムはキッチンカーの製造業者ごとに特殊な環境におけるオリジナルな仕組みであることが多いので、改修ができないキッチンカーも中にはあると思います。
「2-1、2021年6月以前の営業許可と2021年6月以降の営業許可の混在になる」でも解説した通り、現行の営業許可を取得済みの場合は問題無いそうです。
2021年6月以降に新しく中古キッチンカーを購入して営業許可を申請する際には注意が必要です。なお、非接触水道は、手洗い槽の蛇口のみ対応していれば問題ありません。

2-7、器具や容器で使えない素材

改正・食品衛生法の施行後は、キッチンカーの施設や、調理器具、容器などで使用することができない素材が出てきます。
少し細かい説明になるのですが、これまでは「設備には、この素材は使ってはいけませんよ」というネガティブリスト基準で運用されていました。しかし施行後は「設備に使う素材は、このリストに認められている素材しか使ってはいけませんよ」というポジティブリスト基準で運用されることになります。
中古のキッチンカーを買取したときなどにたまにあるのが、給水タンクや、給水配管やホースなど食品衛生法の基準を満たしていない素材でできているキッチンカーもあったりします。意図的でないにしろ、これは製造している業者のミスですが、責任はその設備で営業した事業者が取る事になるので本当に注意が必要です。
それぞれのパーツが食品衛生法に適合しているかを確認するのが大切です。

2-8、給排水設備に必要なタンク容量が40㍑、80㍑、200㍑の3種類になる

キッチンカーは自動車で移動して販売をする目的のため、これまでも独自の独立した給排水設備を搭載する必要がありました。
この給排水設備もまた、都道府県ごとに異なる設備基準で運用されていましたが、改正・食品衛生法の施行後は、40㍑程度、80㍑程度、200㍑程度の3種類に統一されます。
そして、この給排水タンクの容量によって、キッチンカーで認められる調理工程や提供メニューが異なることになりました。
次章で詳しく解説していきます。

3.給排水タンク容量による営業許可の違い

3-1、キッチンカーの給排水タンク容量についての解説

2019年12月に、厚生労働省から全国の知事や保健所に対して次の通達が出ました。
この内容は、キッチンカーに備え付けられている給排水のタンクの容量で、提供できる品目や調理工程の許可する範囲を変えるという主旨で、全国に通達されました。

いわゆるキッチンカーによる営業における留意点 各給水・廃水タンクの容量で実施可能な営業内容の目安を以下のとおり示すが、営業者の業務計画をよく聴取し、業務実態に沿った容量のタンクを整備させること。(中略)

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000582226.pdf
  • 給水・廃水タンクの容量が 40 リットル程度 ・ 簡易な調理のみ(温める、揚げる、盛り付ける等)を行うこと、 又は単一品目のみ取り扱うこと ・ 使い捨て食器を使用する
  •  給水・廃水タンクの容量が 80 リットル程度 ・ 大量の水を要しない、2工程程度までの簡易な調理を行うこ と、又は複数品目を取り扱うこと ・ 使い捨て食器を使用する
  •  給水・廃水タンクの容量が 200 リットル程度 ・ 大量の水を要する調理を行う、複数の工程からなる調理を行 うこと ・ 通常の食器を使用すること

これらをまとめたのが下図になります。

ちなみに、40㍑以上、80㍑以上、200㍑以上という区分はこれまで東京都と群馬県の2都県で採用していた設備基準ですので、東京都の設備基準に合わせたものと思われます。

東京都ではこれまで、タンクは40㍑以上、80㍑以上、200㍑以上という区分でしたが、今回は全国に適用する大きな変更でもありますので移行を柔軟にするために、40㍑「程度」、80㍑「程度」、200㍑「程度」として、緩和されていることも分かります。

3-2、40㍑、80㍑、200㍑ 提供品目数の違い

改正・食品衛生法の施行後に新たに営業許可を取得する場合、給排水タンクの容量によって、提供可能な品目数が異なります。
単一品目とは、クレープならクレープ1品で1カウントされます。1メニューだけ提供が可能です。この場合、例えば他にドリンクなどを同時に提供することができません。
複数品目とは、からあげ+ポテト+ドリンクなど、異なる複数のメニューを1台のキッチンカーで提供できるという営業許可の条件です。
80㍑と200㍑では同じ「複数品目」となっていますが、ともに品目数無制限ということではなく、保健所によっては「そのキッチンカーに搭載された設備で可能な程度の複数品目」であったり、「調理工程の範囲であればメニューの制限なし」であったり、という違いがありそうです。

3-3、40㍑、80㍑、200㍑ 提供容器の違い

改正・食品衛生法の施行後に新たに営業許可を取得する場合、給排水タンクの容量によって、提供に使える食器が異なります。
40㍑または80㍑の区分で営業許可を取得したキッチンカーでは、すべてのメニューで使い捨て容器を用いて提供する必要があります。これはキッチンカーで食器を十分に洗浄できないからことが理由です。全国レベルでほとんどのキッチンカーがこの使い捨て容器で提供していますので、多くの方がイメージしやすいだろうと思います。
200㍑の区分で営業許可を取得したキッチンカーでは、洗浄可能な食器を再利用して使用することができます。一般的な飲食店と同じ食器類の運用方法です。持続可能な社会という側面からも普及が望まれるところですが、まだまだこれからです。
これまで使い捨て容器しか認めていなかった都道府県では、新しい取り組みと言う事になります。食器を用いたグルメを提供するキッチンカーも出てくるかもしれません。

3-4、40㍑、80㍑、200㍑ 大量の水を要する調理とは

改正・食品衛生法の施行後に新たに営業許可を取得する場合、キッチンカーに200㍑程度の給排水タンクを備えることで「大量の水を要する調理」のメニューが提供可能となります。
たとえば、ラーメンやうどんなどが「大量の水を要する調理」のメニューです。設備の条件もあって、キッチンカー全体の中でラーメンやうどんを提供するキッチンカーは少ないですが、それだけに街中でもイベントでも注目をされやすいメニューです。
これまでタンクの容量に限らず、ラーメンやうどんを認めていた都道府県もありますが、改正・食品衛生法の施行後には、新しく営業許可を取得する場合、200㍑程度の給排水タンクを備えるか、あるいは、レトルト麺を用いたり、汁なし担々麺や、汁なしうどんのような大量の水を要しない調理方法のラーメンやうどんに変更することになります。
キッチンカーは空間が限られている上に200㍑タンクはなかなかサイズも大きいですので、後からの設備の変更は少しむずかしいかもしれません。

3-5、40㍑、80㍑、200㍑ 調理工程のちがい、車内での仕込み

3-5-1、200㍑程度の給排水設備を備えたキッチンカーは 車内での仕込みができる

これまで、キッチンカー車内のキッチンで仕込み行為ができる都道府県もあれば、車内での仕込み行為は禁止の都道府県もありましたが、改正・食品衛生法の施工後に200㍑程度の給排水設備を備えた状態で、営業許可を取得した場合、どの都道府県でも「車内での仕込み行為」が可能になります。これは非常に大きな変更点です。
仕込み行為とは、料理を作る際に第一工程となる、野菜を洗ったり、野菜やお肉を包丁で切ったり、下ごしらえをするような調理工程のことです。たとえば東京都では「仕込み行為はすでに営業許可を取得している飲食店施設でなければおこなってはいけない」ということになっていました。
なお、200㍑の給排水設備を備えていた場合でも、現法での営業許可を取得していている場合は、引き続き車内での仕込み行為はおこなうことができません。ただし、現在取得している営業許可を廃止した上で、改正・食品衛生法の施行後に新たに新基準の営業許可を取得すれば「車内での仕込み行為」は可能になるとのことです。

3-5-2、車内での仕込み行為とは

次に「車内での仕込み行為」について説明します。
ひとくちに仕込み行為と言っても、洗う、切る、下ごしらえする、というように様々な工程がありますが、各都道府県ではこの「車内での仕込み行為」を全て認めるということにはならない、ということでした。各都道府県に検討会を立ち上げ、車内ではどの仕込み行為までを認めるか、どの仕込み行為は認めないかのガイドラインを策定しているようです。
「車内での仕込み行為」の範囲については、各都道府県で違いが出てくる可能性があり、注意が必要です。

3-5-3、40㍑、80㍑、車内での仕込み行為ができない場合

現法の営業許可で、車内で仕込み行為ができない都道府県のキッチンカー事業者の方はすでに下記のいずれかの方法で調理していると思います。
①営業許可を受けた固定店舗の飲食店で仕込み行為をおこない、キッチンカー内で加熱や盛り付けをおこなって販売する
②すでに仕込み済のカット野菜や冷凍食材を使って、キッチンカー内で加熱や盛り付けをおこなって販売する
改正・食品衛生法の施行後は、40㍑程度や80㍑程度の給排水設備を備えたキッチンカーは、このいずれかの方法で調理することになります。
詳細は管轄の保健所にご確認下さい。

りこぴんキッチンカーが製作しているキッチンカーは?

当社制作の車両はもちろん改正後の食品衛生基準を満たしており、問題なく保健所の許可を取る事が出来ます。